多拠点滞在中に熱中症・低体温症 子どもを含む家族で知っておくべき対応
多拠点での生活や移動中には、慣れない気候や環境の変化に直面する機会が増えます。特に夏場の熱中症や冬場の低体温症は、誰にでも起こりうる緊急事態です。ご自身やご家族が、滞在先でこのような症状に見舞われた場合、どのように対応すれば良いのか、落ち着いて対処するための情報をまとめました。
熱中症になった場合の対応
熱中症は、高温多湿な環境下で体内の水分や塩分バランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなることで起こります。軽度から重度まで様々な症状が現れます。
症状
- 軽度: 立ちくらみ、めまい、顔のほてり、筋肉痛、足のつり(こむら返り)、気分が悪い
- 中等度: 頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、集中力の低下、意識がぼんやりする
- 重度: 意識がない、けいれん、高い体温(39℃以上)、呼びかけへの反応がおかしい、まっすぐ歩けない
応急処置の手順
- 涼しい場所へ移動する: エアコンの効いた室内や、風通しの良い日陰に移動させます。
- 体を冷やす: 衣服を緩め、濡らしたタオルや冷却材で首の周り、脇の下、足の付け根など太い血管が通っている部分を集中的に冷やします。うちわや扇風機で風を送ることも有効です。
- 水分と塩分を補給する: 意識がある場合は、経口補水液やスポーツドリンク、塩飴などを摂取させます。大量に汗をかいている場合は、水やお茶だけでなく、塩分も同時に補給することが重要です。意識がない場合や、水分・塩分が自分で摂取できない場合は、無理に飲ませてはいけません。
医療機関への相談タイミング
- 意識がない、反応がおかしい、けいれんがある、体が非常に熱いなどの重度の症状が見られる場合は、ためらわずに119番通報し、救急車を要請してください。
- 自分で水分・塩分が摂取できない、応急処置を行っても症状が改善しない、頭痛や吐き気があるなどの中等度の症状が見られる場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
- 判断に迷う場合は、救急安心センター事業(#7119)に電話して相談することも可能です。滞在している地域の#7119が利用できるか、事前に確認しておくと良いでしょう。
低体温症になった場合の対応
低体温症は、体が熱を失う速度が熱を作り出す速度を上回り、体の中心部の体温が著しく低下した状態です。冬場だけでなく、夏場でも水辺のレジャーなどで起こる可能性があります。
症状
- 軽度: 震え、寒気、手足の冷え、皮膚が青白くなる、意識がはっきりしているが動作がぎこちない
- 中等度: 震えが止まる、意識がもうろうとする、言動がおかしい、脈が弱くなる、呼吸が浅くなる
- 重度: 意識がない、脈や呼吸がほとんど感じられない、体が硬直する
応急処置の手順
- 暖かい場所へ移動する: 寒さや風雨を避けられる、乾燥した暖かい場所に移動させます。
- 濡れた衣服を着替えさせる: 濡れた衣服は熱を奪います。速やかに乾いた暖かい衣服に着替えさせます。
- 体を温める: 毛布などで体を包み、保温に努めます。首、脇の下、足の付け根などをカイロなどで温めることも有効ですが、熱すぎるものを直接皮膚にあてないように注意が必要です。意識があれば、砂糖を入れた温かい飲み物(カフェインやアルコールは避ける)をゆっくり飲ませます。体を急激に温めすぎるのは危険な場合があるため、ゆっくりと体温を戻すことを意識してください。
医療機関への相談タイミング
- 意識がない、震えが止まった、言動がおかしい、脈や呼吸が弱いなどの症状が見られる場合は、重度の低体温症の可能性があります。速やかに119番通報し、救急車を要請してください。
- 応急処置を行っても震えが止まらない、症状が改善しない場合は、医療機関を受診する必要があります。
子どもに関する特別な注意点
子どもは大人に比べて体温調節機能が未熟であり、体調の変化を自分で伝えられない場合もあります。保護者が周囲の環境や子どもの様子をこまめに観察し、早期に異変に気づくことが非常に重要です。
- 熱中症: 遊びに夢中になって水分補給を忘れたり、暑さを我慢したりすることがあります。顔色、汗のかき方、元気がないかなどをよく観察し、定期的に涼しい場所で休憩させ、水分を補給させてください。
- 低体温症: 冬場の屋外活動や、濡れたままで過ごす際に起こりやすくなります。震えや顔色の変化に注意し、体が冷え切る前に暖かい場所へ移動させ、着替えや保温をしっかり行う必要があります。
- 子どもの場合は、判断に迷う際に小児救急医療支援システム(#8000)に電話して、医師や看護師からアドバイスを受けることも有効です。
多拠点滞在ならではの準備と心構え
慣れない土地では、どこに医療機関があるか、相談窓口はどこかなど、情報がすぐに得られない場合があります。
- 滞在先の緊急連絡先と医療機関情報の事前確認: 滞在先の自治体の公式サイトなどで、夜間・休日を含む緊急時の連絡先、休日当番医、救急病院などの情報を事前に確認し、家族で共有しておきましょう。
- かかりつけ医との連携: 持病やアレルギーがある場合は、多拠点生活や移動に関する注意点、緊急時の対応についてかかりつけ医に相談しておくことも重要です。
- 体調の変化を伝え合う: 家族間でその日の体調や感じていることを伝え合う習慣をつけることで、早期の異変に気づきやすくなります。
- 応急処置セットの準備: 体を冷やすための冷却材(瞬間冷却パックなど)、経口補水液、塩分補給できるものなどを常備しておくと安心です。
まとめ
多拠点滞在中に熱中症や低体温症などの緊急事態に遭遇することは、大きな不安を伴います。しかし、事前に症状や応急処置の方法を知り、必要な連絡先を確認しておくことで、落ち着いて適切な対応を取ることができます。ご自身の体調管理はもちろんのこと、特に体温調節機能が未熟な子どもの様子には常に注意を払い、家族全員で安全に多拠点生活を送るための準備を進めていきましょう。